研修医の日常
令和5年度
脳神経外科|研修医M先生
脳神経外科研修では主に手術と救急対応を経験します。
手術はまず慢性硬膜下血腫に対する穿頭ドレナージ術を経験しました。手順としてはCTで血種の位置を確認し、穴を開ける位置を決めます。そして局所麻酔下で皮膚を切開し、手回しドリルで頭蓋骨に穴を開けます。露出した硬膜を切開し、ドレーンチューブを入れて、血種の洗浄を行います。最後にドレーンを留置し、バーホールボタンを留置し、終了です。これを指導医と共に行いますが、先生が適宜アドバイスをしながら手技を行うため大変勉強になります。ほかにも脳動脈瘤クリッピング術や視床出血の脳室穿破に対する脳室ドレナージなどを助手として経験し、助手として間近で先生方の手技を見ることができ大変勉強になりました。
救急対応については主に脳梗塞、頭部外傷について経験しました。脳梗塞では治療までのスピードが予後に大きく関わります。そのため患者が運ばれた後、神経診察と問診を速やかに行い、画像を撮ります。その後、画像と問診した情報から発症時間を推測し、治療適応の可否を判断します。こうしたケースはどこの診療科に行っても救急でいずれ対応しなければならず、上級医の先生と一緒に診療にあたることができるのは大変良い経験となりました。
このように脳神経外科では、脳神経に関わる様々な疾患を取り扱います。こうした経験はどこの科に進んでも大変役立ちます。こうした経験を生かせるように、さらに精進しようと思います。
外科|研修医W先生
外科研修では、午前は病棟ラウンドから始まり、外来見学、処置の手伝いをします。午後は手術予定があれば手術に入り、その他、下部内視鏡検査の見学などがあります。また、救急や他科から緊急で手術が入る場合もあります。
外来では乳がん、消化器系悪性腫瘍、鼠径ヘルニアといった主に腹部疾患を対象としています。研修中には鼠径ヘルニア、脱腸などの臨床所見を見ることができました。外来処置では臀部の膿瘍切開をする機会がありました。
手術は大腸がん切除術、鼠径ヘルニア修復術、虫垂切除、胆嚢摘出術などが挙げられます。方法は内視鏡、開腹どちらの場合もあります。大学病院などハイボリュームな施設と異なり、一般的に頻度が高い疾患を対象にしています。基本的に研修では術野に入り、術者の視野確保、吸引、内視鏡であればカメラの操作、吸引、閉創の際は必ず真皮縫合をさせていただきました。手術以外でも胃瘻造設の際の穿刺を経験することができました。
当院は中規模な病院であり、先生との距離も近いため、大病院と比較して手技を多く経験できる点が魅力だと感じました。私自身は不器用な方であり、手技には自信がありませんでしたが、先生方の指導の下で安全に実施することができました。また、手術は6時間を越える症例もありましたが、術中も今何をしているのかといったことを丁寧に解説して下さり、理解しながら進められ大変勉強になりました。外科は専門性が高く、短い研修期間でできることは限られますが、内科と違う視点を学べる良い機会となりました。
麻酔科|研修医S先生
麻酔科研修では、午前中は外来見学や術後診察、午後は手術に入ります。外来患者さんは術前診察の方と緩和ケアの方がいらっしゃいます。術前診察の見学では、術前の患者さんに対する問診を学びます。具体的には体格や心機能、呼吸機能などを麻酔科医の先生と確認し、各患者さんの麻酔のリスクについて話し合います。緩和ケア外来の見学では、麻酔科の先生が患者さんやご家族にどのような声かけや傾聴をしているかを拝見することで、麻酔科だけでなくほかの診療科での患者さんへの接し方の勉強になります。
午後の手術では、患者さんが入室する30分前から麻酔薬をシリンジに詰め、麻酔機のテストをします。普段カルテでオーダーするだけで、実際の薬品の扱い方は知らないことが多かったのですが、自分の手を動かすことでよりシリンジや針の扱い方、アンプルとバイアルの違いや麻薬や筋弛緩薬に対する理解を深めることができました。マスク換気や気管挿管といった手技は、麻酔科の先生が積極的に経験する機会を設けてくださいました。
私自身麻酔科医は患者さんと接する機会が少ないというイメージがありましたが、実際は術前術後も患者さんのベッドサイドに行き、バイタルを確認したり、お話をしたりして、患者さんへ寄り添う気持ちが強く感じられました。当然のことながら、術者よりも手術室にいる時間が長くなるため疲労を感じることもありましたが、学ぶことがとても多い実りある研修であったと思います。
内分泌・代謝内科|研修医M先生
内分泌・代謝内科では、病棟業務や外来に加え、NST回診への参加や甲状腺吸引細胞診の見学なども経験できました。
病棟業務では、糖尿病や高血糖高浸透圧症候群、原発性アルドステロン症、副腎偶発腫瘍などの患者さんを担当しました。毎日担当患者さんについてのアセスメントや治療方針についてご指導いただき、疑問点も丁寧に説明してくださり、考え方を身につけるという点でも大変勉強になりました。特に印象に残ったのは糖尿病初回診断の症例で、血糖コントロールや合併症精査、患者教育など糖尿病に関することを網羅的に学ぶことができたことです。また、自己血糖測定やインスリン注射手技の指導の様子を見学し、患者さんが行う手技への理解も深まりました。
先生方には優しくかつ熱心にご指導いただき、大変充実した研修期間となりました。この場をお借りして改めて感謝申し上げます。
循環器内科|研修医:S先生
循環器内科では心不全や不整脈をはじめ、冠動脈疾患、末梢血管疾患など全身の循環に関わる診療を行っています。
心臓カテーテル検査・治療の件数が多く、研修医の立場でも積極的に参加することができます。例えば、エコー下での頸静脈穿刺や冠動脈カテーテルの挿入、造影、治療時のバルーン拡張収縮の操作、などなど実践的な手技を学ばせていただきました。先生方の指導も手厚く、コメディカルの方たちも研修医に協力的で、心エコー図検査の手技など丁寧に教えていただきました。
また、病棟では患者さんの状態をしっかり確認し、どんな検査が必要か、どんな治療が出来るのか、などを指導医と共に診察していくことで少しずつ理解を深めることができました。
循環器内科の研修は大変なイメージを持つ人が多いと思います。ですが手技が多い分、常に体験する機会がまわってきます。その時に慌てることがないよう、指導医の先生方の手技をどの様な視点で観察すればよいかを学ぶことができました。これは他の診療科を回る際にも非常に役に立つものであり、その視点を養うことができたとても良い研修でした。
研修医S先生
実習でも見学でもたまたま伺ったことのない病院だったので、初めは少し不安でしたが、楽しく充実した研修をさせて頂いています。当院が他の病院と比べて特徴的なのは、結核病棟があることです。また、金沢市救急隊からの救急車搬送数が石川県で3番目に多いです。当直以外にも週に2回半日、救急の診療に携わることが出来ます。上級医の先生方はとても優しく研修医のレベルに応じて、色んな手技や仕事の仕方を教えてくださいます。ローテートしていない診療科の手技を経験することもできます。また、コメディカルの方も気さくで各分野においてのスペシャルリストばかりなので、患者さんの状況把握、エコーの見方、代替薬などたくさんのことを教えてくださり、お聞きしやすい環境が整っていると感じます。研修医一人ずつ年間指導医についていただき、困ったことがあれば何でも相談することが出来ます。女性医師の数も多く、女性の研修医の方も働きやすいです。また7月にフランスのナンシー市の研修医との交流もあるので、楽しみにしています。機関型研修医は2年目の夏にナンシー市で研修することが出来ます。温かい環境で研修させて頂けることに感謝し、引き続き頑張っていこうと思います。
研修医T先生
私は基幹型研修医として2年間金沢市立病院で研修させていただきました。
当院は内科系の中規模病院であり、いわゆるcommon diseaseをしっかり学ぶことに適した病院であると感じました。各科の敷居は低く、毎朝、内科の入院患者を対象としたカンファレンスが行われ、色々な科の先生からのご意見がいただけ、広い視点から病態を観察する良いきっかけになりました。先生方は優しく、希望に関してはできる限り応えていただけますし、手技に関してもやる気さえあれば積極的に行わせてもらえる環境です。また他の病院での研修の機会も多く、環境が大きく異なります。その点でも視野を広げることができ、プライマリケアを学ぶ観点からは非常に恵まれていたと思います。
金沢市立病院の研修は多様性と自由度の高さが特徴であると感じます。自身のやりたいことや、時間の使い方で大きくその価値が左右されると思いますが、ぜひ目標をもって実りある研修生活を送られることを願っております。
研修医M先生
大学病院とのたすきがけで、金沢市立病院で1年間研修させて頂きました。
市立病院での研修の特徴としては、一つの医局内に各科の先生方がいるので、相談がしやすく、指導医や各科との垣根が低いということがあります。また、研修医が少ないこともあり、研修医同士で手技を取り合うことなく、数多くの手技を指導医から指導して頂き、経験できるということです。指導医の指導のもと、1年目から、内視鏡検査やIVH挿入など、様々な手技を経験することができます。度々、他科からも、市中病院では珍しい検査を行う際には、呼んでいただけることもありました。
また、地域の中核病院であり、common diseaseをしっかり学ぶことができることも特徴の一つです。臨床研修において、重要視する人も多いのではないでしょうか。
日本循環器学会162回東海・第147回北陸合同地方会
循環器内科|研修医M先生
今回私は日本循環器学会162回東海・第147回北陸合同地方会で学会発表を行わせていただき、優秀賞をとることができましたので、その経緯について記載いたします。
私に学会発表の話が来たのは7月の初めでした。循環器内科の先生から面白い症例があるからやってみないかとの話があり、自分自身学会での発表に興味がありましたので軽い気持ちで申し出を承諾しました。このように軽い気持ちで始めた学会発表ですが、学会発表のための抄録の作成、スライド作成、発表練習は慣れていないためとても難しく、それを自分で作成していかなければならないので大変苦労しました。そのような時、先生から様々なアドバイスをいただき、大変勉強になりました。発表内容だけでなく、スライドのフォント、文字の大きさ、見やすいグラフなど、聞いている人が分かりやすいスライドを作成する大切さを、慣れない自分に対し熱心に教えていただきました。また、学会発表に興味があると言ったものの、自分は人前では緊張する方なので、発表練習はなかなか上手にいきませんでした。それでも時間が空いた時に発表練習に嫌な顔をせずに付き合っていただきました。時には救急の合間を縫って夜遅くまで発表練習に付き合っていただいたり、循環器以外の先生にスライドや発表練習もみていただいたりしました。
そうした苦労を乗り越え、発表当日を迎えました。学会発表当日には指導してくださった先生方も駆けつけ、励ましの言葉をかけていただきました。発表は多くの市中病院や大学病院の循環器の先生が聞いている前での発表で大変緊張しましたが、先生方と何度も発表練習をしたおかげで、緊張状態であっても練習の時の様に途中で詰まることなく発表出来ました。質疑応答についても先生と想定される質問を考え、シミュレーションすることで何とか乗り越えることができました。
周囲の先生方のおかげで今回優秀賞を受賞させていただきました。誠にありがとうございました。